スタンフォード大学での博士号取得

こんにちは。三ヶ月ほど間が空いてしまいました。

この間、わたしは2009年12月4日にスタンフォード大学で博士論文を提出し、博士号(Ph.D.)を取得しました。その後、日本へ帰国し、2010年1月12日から筑波大学の先端学際領域研究センター・マルチメディア研究プロジェクトでポスドク研究員のお仕事を始めました。博士論文のタイトルは、"A Hybrid Model for Timbre Perception: Quantitative Representations of Sound Color and Density" です。2005年から取り組んでいた音色の知覚モデルの研究をまとめたものです。

ところで、スタンフォードでは、私が博士論文を提出した2009年の秋学期から論文をオンラインで提出できるようになったので、提出にはその制度を利用しました。つまり、私はオンライン提出一期生というわけです。嬉しいですね! オンラインで提出された博士論文は、スタンフォードのデジタル図書館に永久的にアーカイブ保存され、google scholarを通じて世界中に無料配布されるそうです。また、インターネットで配布されるため、Creative Commonsを利用したライセンシングが推奨されています。

スタンフォードニュースで博士論文のオンライン提出に関する記事があるのでご覧ください。私の論文もタイトルだけですが紹介されています!
Five dozen doctoral students chose bits and bytes over ink and paper



さて、この論文提出がどんな流れかというと

  1. 博士課程の博士論文以外のrequirementsを全て満たしていることをスタンフォードの学務管理ウェブサイトAxessで確認。
  2. Axess で Apply for graduationをクリック。このとき、hoverで"Lifetime Commitment"と出るのが可笑しい。(そっか、卒業するのってLifetime Commitment なのね〜。)
  3. タイトルとか名前とか入力して保存。
  4. Thesis Reading Committeeからサインをもらって、これを学務課に提出。これだけは紙でやらないといけない。そうすると学務課がAxessのオンライン提出をアンロックしてくれる。
  5. アンロックされたThesis Submitのリンクをクリックしてスタンフォードライブラリーのウェブサイトに移動。
  6. 論文の概要をアップロードして、Creative Commonsのオプションを選択。これはCreative Commonsライセンスを付ける・付けない、そして付ける場合はどのタイプのライセンスにするかをクリックして選択。そして論文のpdfをアップロード。
  7. 最後に全ての情報を再確認して、提出ボタンをクリック。

でおしまいです。(記憶をたどって書いているので、細かい違いはあるかもしれません。)

オンライン提出には時間と経費の節約、図書館のスペース節約、論文をプリントアウトしなくていい、世界中にgoogle scholarを通じて配布でき広い読者層にアピールできる、などのメリットがあります。その他、博士論文データベースが拡充するにしたがって、今まで予想のつかなかったようなメリットが生まれるかもしれません。

ちなみに、前出の記事によれば、2009年秋学期に博士論文を提出した114人のうち60人がオンライン提出、そのうち52人がCreative CommonsのNon-commercial Attributionでライセンシングしたそうです(ちなみに私のCCライセンスもこれ)。公開時期を遅らせることもオプションで選べるのですが、47人は直ちに公開を選択、つまり13人は特許申請など何らかの事情で日数をおいてからの公開を選んだようです。

スタンフォードでも初めての試みで、小さなトラブルや説明不足もあったけれど、過ぎてみれば良い思い出だし、なによりも自分の博士論文が世界中の人に読んでもらえる可能性にワクワクしています。これからは世界でトップレベルの博士論文が大学図書館で埃をかぶることなく、誰でもオンラインで無料で読める時代がくるのですね。楽しみです。